FHEとは
Flexible Hybrid Electronics(FHE)とは、印刷エレクトロニクスと従来の硬質エレクトロニクスを融合させた技術です。柔軟な基板上に印刷で配線を形成し、そこへ従来の電子部品を実装することで構成され、曲げ・伸張・変形に対応しながらも電子回路の性能を維持できることが特徴です。
FHEの構成
FHEは「印刷」と「実装」を組み合わせた技術であり、それぞれの機能を最適に発揮させるために、材料・プロセスごとに役割が分かれた構造を取ります。
例えば、導電配線は印刷によって作ることで、広い面積を低コストで製造できます。一方で、計算や制御などの高い性能が必要な部分は、シリコンICとして別に搭載されます。また、全体を曲げても壊れないようにするために、基板の素材選びや、部品に負担がかかりにくい工夫も重要です。
このように、FHEは単一材料・単一プロセスでは成立せず、機能ごとに最適な技術を積み重ねた結果として現在の構造に収束しています。
そのため断面構造を見ると、単なる積層ではなく、役割ごとに分離された「機能統合構造」として理解することが重要です。
以下に、FHEの断面構造と各層の役割を示します。
※こちらは例でありすべての製品のイメージではございません。
・最上層:封止・保護層
実装された部品を、水分や汚れから守るための保護層です。
また、曲げたときに部品へ負担がかかりすぎないようにする役割もあります。
・機能統合層1:電子部品(IC・受動部品)
計算や制御を行うICなどの電子部品は、基板の上に直接取り付けられます。
チップを薄くすることで、全体をより薄く・軽くし、曲げやすくする工夫がされています。
・機能統合層2:印刷された配線(導電回路)
配線はインクのような材料を使って印刷で形成されます。
これにより、広い範囲を無駄なく、比較的低コストで作ることができます。
主に銀インクが使われますが、コストと環境負荷を抑えるために銅材料の活用も進んでいます。
・機能統合層3:印刷機能(センサー・アンテナ)
センサーやアンテナなど、広い面積を使う機能も印刷で作られます。
配線と一体になって構成されることが多く、用途に応じて材料や形を設計します。
・最下層:フレキシブル基板
全体の土台となるフレキシブルな基板です。
PETやポリイミドといった素材が使われ、曲げられるだけでなく、強度や耐熱性も確保されています。
FHEの特徴
FHEは、以下の特長により、従来の電子機器やプリンテッドエレクトロニクスでは難しかった設計を可能にします。
- 曲がる(柔軟性)
- 曲面や動きのある部分にも取り付けることができ、これまで電子機器を配置できなかった場所にも機能を組み込めます。
- 性能
- 計算や制御、通信といった高度な機能はシリコンICが担うため、プリンテッドエレクトロニクスだけでは難しかった高性能な動作が実現できます。
- 軽量・薄型
- 薄くて軽い多層構造にできるため、持ち運びやすさも向上します。
- 大面積化
- センサーやアンテナを広い範囲にコストを抑えて配置できるため、製品の表面そのものに機能を持たせるといった設計も可能になります。
主な活用用途
FHEはすでに一部の分野で実用化が進んでおり、今後さらに幅広い用途への展開が期待されています。
実用化が進んでいる分野
・ウェアラブル医療パッチ・センサー
皮膚に貼り付けることで、心拍や体温などの生体情報を継続的に測定できます。
・RFIDタグ/スマートパッケージング
低コストで広い範囲に配置できる特長を活かし、物流管理やトラッキング用途で活用されています。
今後拡大が期待される分野
・自動車(スマートインテリア)
内装材にセンサーや配線を組み込み、シートやパネルそのものに機能を持たせる取り組みが進んでいます。
近年の展示会では、ドライバーの姿勢や心拍、体温などを検知できるセンサー内蔵シートも発表されており、「構造そのものを電子化する」流れが現実になりつつあります。
技術課題
FHEは有望な技術である一方で、いくつかの課題もあります。
・従来の電子回路(PCB)やリジッド基板と比べると性能や耐久性が未確立
・標準化の欠如
・材料や製造方法の組み合わせによって特性が変わりやすい
・製造・量産プロセスの確立が進行中
そのため、すでに実用化されている分野もある一方で、多くの用途では現在も試作や検証が続けられています。
まとめ
FHEは、柔軟性と高性能を両立できる次世代の電子技術として、すでに一部の分野で実用化が進んでいます。
今後は、これらの課題を解決しながら、さらに幅広い分野での活用が期待されています。
スクリーン印刷機メーカーである桜井グラフィックシステムズでは、設備不要で製品開発におけるプロセス設計、試作、品質確立、量産の流れを一貫して伴走支援を行う開発・試作支援サービスがございます。
FHE開発における構想段階のアイデアについても、お気軽にご相談ください。
