この記事の3つのポイント
1. 「設備投資の決断ができない」は、もはや挑戦を諦める理由にならない
量産化の目処が立たない段階での数億円規模の設備投資は、多くの経営者にとって高すぎるハードル。しかし、初期投資リスクを外部に委ねながら「量産のエビデンス」を先に揃える手法が、今この壁を取り払いつつある。
2. 競合他社との差を生むのは「アイデアの質」ではなく「検証スピード」
世界中が社運をかけて競う次世代デバイス開発において、勝敗を分けるのは構想の優劣よりも、仮説を形にするまでの速度。「図面ができてから相談する」という従来の常識が、知らず知らずのうちに自社の商機を奪っている。
3. 「試作パートナー」の選択が、量産化・事業化の成否を左右する
試作を依頼する相手が「指示通りに刷るだけ」の加工業者か、構想段階から量産移行まで伴走できるパートナーかによって、開発の到達点は大きく変わる。パートナー選びは、単なるコスト比較ではなく経営判断。
SAKURAIが提供する「試作特化型受託生産(伴走型支援)」の3つのポイント
1. 「図面がなくても相談可能」で開発スピードを劇的に加速
80年続く装置メーカーの知見を活かし、構想段階(図面がない状態)からエンジニアが伴走。死の谷試行錯誤をプロ同士の「戦略的な共創時間」に変え、致命的な手戻りや機会損失を防ぎます。
2. 巨額の設備投資ゼロで「量産のエビデンス」を先に獲得
最新の1棟専有クリーンルームと量産仕様の印刷機をR&D環境として提供。ラボと量産の間に立ちはだかる「死の谷」を、数億円規模の初期投資リスクを負うことなく乗り越えられます。
3. 「試作して終わり」ではない、事業化を見据えた3つの出口戦略
ISO27001基準の環境で機密情報を守りながら試作を成功させた後は、「ライン受託」「現地納品」「パートナー紹介」と、お客様の事業フェーズに合わせた最適な着地点(量産化)まで支援します。
設備投資という「壁」を、事業成長の「武器」に変える
――2025年に「試作特化型受託生産(伴走型支援)」が本格始動しました。装置メーカーである私たちが、なぜ今この支援サービスに注力するのか、その真意を教えてください。
若尾社長(以下、若尾): 一言で言えば、モノづくりのフェーズが変わったからですね。かつては「一つの優れた製品を、同じ機械を100台並べて大量生産すれば良し」とされていました。しかし今は、100通りのアイデアを試し、その中から市場に受け入れられる「正解」をいち早く見つけ出さなければなりません。
特に近年、スクリーン印刷の主戦場はポスターなどの「商用」から、半導体やバイオセンサー、次世代電池といった「工業用途」へとシフトしています。
――「工業用途」となると、これまでの商用印刷とは求められるものが異なります。
若尾 : そうですね。こうした先端分野の開発には、高度なクリーンルームや数億円規模の精密印刷機を必要とするケースが多いのが実情です。しかし、まだ製品化の目処が立っていない段階で、それだけの巨額投資を経営判断として下すのは、非常に高い壁となります。
――その「壁」を取り払うために導き出した具体策が、「試作特化型受託生産(伴走型支援)」だと。
若尾 : そうです。「試作特化型受託生産」は、単に「指示通りに刷る」という受託加工ではありません。当社のクリーンルームや最新鋭の装置を、お客様のR&D部門の一部として開放します。そのうえで、詳細な図面がなくても構想段階から当社のエンジニアが加わり、インクの選定から量産時の歩留まり予測まで、商用化へのプロセスをお客様と共に構築していくサービスです。
「開発リードタイムの空費」という経営リスクを排除する
――図面がない段階で相談できるというのは、開発のスピード感が劇的に変わりそうです。
若尾 : それがひとつの狙いです。装置メーカーへの相談は「図面ができてから」というケースが多いですが、私たちはその手前の「試行錯誤」も一緒にやりたいと考えています。
当社は1946年の創業以来、80年にわたり「印刷機装置メーカー」として世界の印刷業界と共に歩んできました。装置のメカニズムを熟知していますから、図面がない段階でも「この構造ならこう刷れる」「このインクならこの装置が最適だ」と、ハードとソフトの両面から最適解を導き出せます。この「モノ売り」の技術的な裏付けがあるからこそ、質の高い「コト(解決策)」が提供できると考えています。
アイデアを図面になるまで温めておく時間はもったいないですからね。お客様にはメーカーである私たちの知見を使い倒して、少しでも早くアイデアを形にしていただきたいです。
※「試作特化型受託生産(伴走型支援)」についての詳細は以下のコンテンツをご覧ください。
「仕様未確定」を確かな製造プロセスへ。
――「アイデアを図面になるまで温めておく時間はもったいない」との言葉がありましたが、経営スピードについて、社長はどのような危機感をお持ちですか?
若尾: 意思決定や開発が「停滞」している時間は非常に大きなロスになります。通常、装置メーカーへの相談は「図面が完成してから」行われます。しかし、未知の領域であればあるほど、図面を引く前の「原理試作」の段階でインクの物性や印刷プロセスの限界にぶつかり、開発が止まってしまうケースが多いのです。
この停滞は、現場の苦労話だけに留まりません。市場投入が遅れることによる「機会損失」という経営上の大きな損失になりえます。「試作特化型受託生産」を活用していただければ、エンジニアが悩む時間をプロ同士が手を組んで形にする「戦略的な共創時間」に変え、致命的な手戻りを防ぐことができます。
2026年4月に当社内で「受託生産係」を新設し、各技術拠点を「課」へ昇格させたのも、お客様の経営スピードを止めたくないという私たちの意志の表れです。
次世代デバイス開発の「死の谷」を越えるには
――やはりお客様であるメーカー側の「開発スピード」も、以前に比べて加速しているのでしょうか。
若尾:そうですね。特にペロブスカイト太陽電池などの次世代デバイス分野は、世界中が社運をかけて開発競争を繰り広げています。こうした最先端の領域には、必ず「ラボと量産の断絶(死の谷)」という巨大な壁が存在するのです。
例えば、ラボレベルのスピンコーターを使って、数センチ角のガラス基板上で優れた変換効率を出せても、市場が求めるメーターサイズに広げると、膜厚のムラが生じて性能が急激に低下します。ラボの実験機と、実際の工場で動く量産機では、物理的な挙動が異なるからです。
また、多くの次世代デバイスは湿気や酸素に弱いので、高度なクリーンルームやドライルーム環境も必要です。
これらの壁を越えるには、最初から量産仕様の装置でテストを行う必要があります。当社は最新のクリーンルーム内に量産仕様のシリンダースクリーン印刷機を常設しています。億単位の投資をして自社にラボを作るのではなく、当社の既存アセットを活用して「量産のエビデンス」を先に揃える。この発想の転換が、不確実な段階でのキャッシュアウトを最小化し、商用化への最短ルートを拓くのです。
――一方で、競争の核となる機密情報を社外に持ち出すことを懸念するお客様もいらっしゃるかと思います。
若尾 : もちろん、図面化前の最先端デバイスを社外に持ち出すことに対して、セキュリティ面における懸念があることは理解しています。だからこそ私たちは、情報セキュリティの国際規格「ISO27001」を取得し、生体認証や監視カメラを備えたクリーンルームを「1棟専有」で提供するなど、お客様の機密情報を完全に守り抜く環境を整えています。
「持たざる経営」を完遂させる出口戦略
――試作が成功した後の「出口」について、詳しく聞かせてください。
若尾:私たちは「受託して終わり」という下請けを目指しているわけではありません。お客様の事業フェーズに応じた最適な「着地点」を共に創るために、次の3つの着地点を用意しています。
ライン受託: 初期投資を抑え、当社のラインを「外部工場」として活用していただきます。
現地納品: 「商品化が証明されたライン」を、そのままお客様の工場へ導入し、早期立ち上げを実現します。
パートナー紹介: 当社のネットワークを活かし、最適な量産協力会社との「水平分業」を支援します。
――最後に、この記事を読んでくださったお客様や、次世代の産業を創ろうとしている経営者の方々へメッセージをお願いします。
若尾:設備導入を検討し、納入を待つ1年、2年の間に市場環境は激変します。設備がないこと、あるいは投資判断ができないことを理由に、挑戦を止める必要はありません。
初期投資というリスクの一部を当社が担い、共に試行錯誤を繰り返す。そうして生まれた製品が世に出る時、その量産ラインには当社の装置が並んでいる。そんな「Win-Winの未来」を、私たちの技術力で支えていきたいと考えています。
